【おすすめの10枚】⑩ 山本哲也『INTO THE WORLD』


【おすすめの10枚】
⑩山本哲也『INTO THE WORLD』

アイリッシュを中心に、深く音楽を追求し続けるギタリスト山本哲也さんの3枚目となるソロアルバム。2020.4にリリースされたばかりです。

哲也さんとの出会いも、北海道でした。
私が北海道でソロツアーをしているタイミングで、小松大さんと哲也さんのデュオも来道しており、昼間の私のライブになんと小松崎健さんと3人で来てくれたのです。
私もその夜、小樽での3人のライブを見に行き、とても濃い1日となったのでした。

昨年から今年にかけて、哲也さんとジョイントでライブを企画するようになり、間近で見る彼のプレイに毎回感銘を受けています。
デュオアルバムの項でも書きましたが、哲也さん(小松大さんも同様です)は、きれいな素材をきれいなまま出さない。自分の視点、演奏力で鋭くえぐってきます。その結果生まれてきたものは、さながら彫刻作品のように主体性を感じさせます。

今回のアルバムでは、なんと私の曲『Inner Medium』も素材の一つとなりました。友人として、ミュージシャンとしてとても誇りに思います。
これは私にとって非常に素直な曲で、遠いところにあった想念がそのまま手元に来たような生まれ方をした曲でもあります。
彼のアレンジを聴いて感じたのは、強烈な”楽曲への視線”です。「この曲からこれを受け取った」という意思ですね。
この曲は同じ音型を繰り返しながら展開する曲です。冒頭10秒を聴いてもらうとすぐにわかるのですが、彼は同じリズムのフレーズ4つに対し、全て別の表現を選択しています。リフレインを強調する私のオリジナルとは別の、大きなうねりがこの曲にあると示してくれました。Bメロがまた泣ける・・

浜田隆史さんの『虎杖』では、非常に牧歌的な風景が印象的です。私の曲とは一転してほぼインテンポを選択し、持ち前の深い音色と節回しの妙で4分半を一気に聴かせてくれます。

『Craggy Pinnacle』では、彼のアイドル、アル・ペタウェイのレパートリーを取り上げています。アパラチアン・バンジョーを模したギターワークは、本家の切れ味にも迫り、しかも哲也節の滋味溢れるトラックとなっています。

ハイライトは再録となった『The Coming Of Spring』(Jens Kommnick)でしょう。前回よりエッジが立った録音で、メロディの主張が強くなり、楽曲の持つ力をより浮かび上がらせています。
低音部で始まるAパートは、まだ冬の、土の中の様子。高音で花開くBパートは、春の訪れ。前回の録音では冬のパートが穏やかな冬眠のようなイメージだったのに対し、再録では冬の厳しさにも、そこに耐える人々の生活がある、そのようなストーリーが浮かびます。どちらも素晴らしい演奏ですが、再録のコンセプトは、より能動的になった”冬”のパートにあるのでは?自分なりにそのように感じています。

「来たるべき春を待つ」この曲のテーマは、まさに今の世界にピタリ合致したものです。
数年後、2020年を思い返した時に、哲也さんの奏でる『The Coming Of Spring』が、心に深く根ざしている気がします。

↓こちらから購入できます。
https://www.tetsuya-yamamoto.com/shop/

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
【おすすめの10枚シリーズのコンセプト】2020.4.4
「こんな時には、とてもじゃないけど音楽を聴く気にはならない…」
私もその気持ちはよくわかります。

しかし、最近気づきました。
直接の面識のある友人達のアルバムからは、まるで彼らと楽しく話をしているような、そんな気持ちを貰えるという事を。

これから10枚ほど、そんな友人達のアルバムを紹介していこうと思います。
日常的にライブ活動をしている人たちばかりなので、この騒動が収まれば、誰でも直接会って話ができる人たちの音楽です。

この記事を読んで、10枚をコンプリートしてくれると嬉しいですね。