Hermann Hauser Ⅱ

Hermann Hauser Ⅱ(1960)

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トップ:ジャーマン・スプルース
サイド、バック:ブラジリアン・ローズウッド
ネック:マホガニー
指板:エボニー
ブリッジ:ブラジリアン・ローズウッド

【ハウザーと私】
世界三大名器のひとつと名高いヘルマン・ハウザー。
現在では4世までその伝統が受け継がれているドイツの名門だが、初めて意識したのは18才の時。私のついた師匠の愛器がハウザー3世だった。
ギター専門学校「国際新堀芸術学院」には、師匠の他にもハウザーを所有する方が多く、師匠の奥様は2世を、中には1世を持つ教授もいらっしゃった。

私は入学と同時に祖母に買ってもらったラミレスを持っていたので、そんなハウザーを間近にしても全くピンと来なかった。それよりもクラシックギターの初心者として、技術的に覚えなければならない事が山積していた。

2年後。
3年生になった私は幸運にもプロギターアンサンブルのメンバーに抜擢され、技術の未熟を修練でカバーしてもしきれない、ギター漬けの日々を送っていた。
くる日もくる日も基礎練習を続ける姿を見て、Fさん(2部生の生徒さん)がこんな話を持ちかけて下さった。

「伊藤君、俺のハウザー2世使うかい?家に余ってんだよ〜」

Fさんはそれはそれは楽器を沢山持ってらっしゃる方だった。
その当時は確かロベール・ブーシェを購入されたばかりで「凄い楽器をFさんが買った!」という話題で学院中がどよめいた記憶がある。
「余ってる」というのは言葉のあやだが、ブーシェ、アグアド、フレタ2本、ハウザー2世2本・・・・と、凄まじいコレクションをお持ちだったと記憶している。

その言葉に驚くと同時に、まさに信じられない気持ちだった。
師匠のハウザーは3世だったから、それよりも格上の楽器を使う事ができるなんて!
即、ありがたくお受けした。


ハウザー2世を弾いた時の感覚は一種独特のものだった。

ラミレスの柔らかで包み込むような感じがどこにも無い。
固く太く、まっすぐに飛ぶ音。アルペジオでは見事に分離する和音。演奏ノイズさえも忠実に拾う厳しさ。
ギターとしての「格」の違いを思わされた瞬間だった。多分ラミレスではこの世界観は得られないままだっただろう。

「これで練習すればうまくなるど〜」

と思った。

このハウザーで学生時代、タルレガのグラン・ホタやカルリのギター協奏曲を弾いた。タッチの事など何も分かっていないガシガシの演奏だったが、ハウザーの懐の深さは常に感じていたものだった。

このハウザーは学校卒業と共に無事にお返しする事になる。
Fさん、ありがとうございました!

【ソロ転向後】
卒業後はスティール弦に特化した活動を志したので、しばらくクラシックギターから離れる事になる。
しかし1年もせずにクラシックギターの単音を鳴らす魅力が忘れられず、再びラミレスを引っぱり出していた。

そうなるとハウザーを2年弾き込んだ経験がよみがえり、どうしても良い楽器が必要になってきた。そこで入手したのが愛器アントニオ・マリンである。

更にスティール弦ギターでも大屋建ギターとの出会いがあり、演奏活動の体制はととのっていった。

面白いもので、大屋ギター入手時に一番の決め手になったのが「鳴り方がハウザー2世に似ている」という事だった(これは私自身の主観で、実際はこの楽器からハウザーを連想する人は少ないと思う)。
ハウザーが自分にとって知らず知らず基準というか規範のようになっていた事実が、今となっては興味深い。


【2009年購入】
いつものように楽器屋を徘徊していた時に出会ってしまったのがこのハウザー2世(1960年製)だ。

とある楽器店で
「最近うちははハウザーが熱いです」
店長さんがなんとも軽いノリでハウザー2世を出してきてくれた。
たしかにその時はハウザーの在庫が多かった。2世が3本。3世は4本あったか。
確かにマリンの上をいく楽器を狙っていたが、ハウザー2世ともなると価格も現実的ではなく、全く意識の外だったのだが・・・


4弦7フレットを弾いて
「えー!なにこれ!」
更に3弦10フレットで
「うわーありえんわこれ!」
1弦にたどり着くまでにもう心奪われておりました。


特筆すべきは柔らかな弾き味。
Fさんのハウザー2世を丸2年弾き込んで
「ハウザー2世は剛直」
という印象を確かに持ったのに、この1960年製は透徹ではあるが決して硬く無い。
しなやかで熱い音というか。
余韻は横に広がらず前に出過ぎず、深い奥行きを感じさせる。
それでいてパッと聴きは実に地味なのだ。ここがハウザーらしいところかもしれない。
豊かな倍音が横に広がり、演奏を助けてくれるような、所謂「ゴージャスな楽器」では決して無い。

ブリームがハウザー2世で弾いたフレスコバルディ「アリアと変奏」の音がフィードバックする。
なるほど、あの真っ直ぐで太い音はこういう楽器の音だったのかもしれない。

なまじっか使い込んだ経験があるだけに、今までハウザーを過小評価していたと思った。
このハウザーは、今までのどの楽器よりも強烈だった。


【ハウザーとの日々】
この楽器を手にしたら、フレスコバルディの「アリアと変奏」を録音したい!と強烈に願うようになり、2010年、アルバム「かざぐるま」するに収録に至った。今聴き返してもハウザーを鳴らす感激が伝わってくる。

以来レコーディングに、ライブに、大屋建#035と共にメイン楽器として活躍している。
飛行機に乗る長期のツアーなどにも必ず持っていくので故障を心配される事もあるが、楽器は弾いてなんぼと思うので、ためらわずどんどん酷使していきたい。

しかしハウザーは丈夫だ。これだけ酷使してもへたる気配が微塵もない。

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トップ:ジャーマン・スプルース

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サイド、バック:ブラジリアン・ローズウッド

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ヘッド

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ラベル